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摂食嚥下リハビリテーション

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お近くにお住いの方は当院でリハビリテーションを受けていただけます。

食べることの問題

食べることの問題

食べることの障害のことを摂食・嚥下障害といいますが、これはさまざまな病気で問題となります。というのは、食べることの問題はいろいろあるからです。たとえば、単に摂食障害といえば、拒食症のように食べることを精神的に拒否してしまうことを意味します。

一般的に食べることは本能的な行為であり、自然にできるようになるものだと誤解されています。しかし、食べ物を噛んで飲み込むということは、発育の途中で学習しなければならない高度な機能なのです。知的障害者で、離乳時に食べることを学習できなければ、成人になっても食べる機能が発達していないことがあります。

先天的な疾患や、乳幼児期に病気により脳に障害が残った場合(脳性マヒ)には、四肢の機能や言語機能の障害にとらわれがちですが、同時にこうした食べる機能も損なわれていることも多いのです。また、成人してからも、脳卒中などの後遺症により同様に損なわれることがあります。進行性の病気により徐々に機能が失われていくこともあります。

摂食嚥下障害の原因

精神的原因

拒食症、痴呆

身体的原因

器質的障害…腫瘍、炎症
口腔部…口唇裂、口蓋裂、無歯顎、小顎症
咽頭部…喉頭蓋炎
食道部…食道閉鎖、狭窄症

機能的障害
先天性…筋ジストロフィー、先天性代謝異常
後天性…脳性マヒ、脳血管障害後遺症、脊椎小脳変性症

介護するときの問題

介護するときの問題

では、具体的に、障害者の介護においてどのようなことが問題になってくるのでしょう。最も危険なのは、食べ物を喉に詰まらせて窒息してしまうことです。この時すばやく的確に処置を行わないと、致命的な事故につながってしまいます。

重大結果に至らないためには、窒息時の救急処置(CPR)をトレーニングしておかねばなりません。そして、なによりもまず窒息することを未然に防ぐことのほうが大切です。そのためには、食べることの障害はどのようなことかを知っていなければいけません。それによって、どのように危険かがわかり、対処策を考えられるからです。

ただし、食べることの障害を知るためには、そもそも正常な食べることについて理解していなければなりません。なぜならば、どのような疾病によって、どのような食べる障害が発生するかを正しくわからないからです。

食べる機能

食べることとは、どのようなことなのでしょう

  1. 空腹の時に食べ物を見ると食べたいという気持ち(食欲)が起こります。
  2. 食べ物が自分のものであれば、近寄って手に取り口に運びます。
  3. 大きいものであれば口に入る大きさに噛み切って、口の中に入れます。
  4. そして、口を閉じて食べ物を噛んでいきます。
  5. ある程度噛んだならば、食べているものを丸めて、それを呑み込みます。
  6. 喉を通って、お腹に入っていく感触があります。

このように、食べることは精神や多くの器官による協調的な作業が必要とするのです。これを、段階別に詳しく見ていきましょう。

1.食べる意識(認知)

食べる意識

食べようという気持ちを起させるのは大脳ですが、これが目覚めていなければ食べることはできません。病気や障害のため、意識がはっきりせず、ぼんやりしていたり呼びかけないと寝てしまう状態で、食べ物を口の中に入れるのは非常に危険です。

2.口に持っていき、入れる(捕食)

食べるという意識がはっきりしていても、四肢の運動に障害があると、食具・食器を使って食べ物を口に入れることが困難になります。食具・食器を使って食べることは、高度な運動能力・協調能力を必要とします。口唇を閉鎖することができない場合もあります。この場合、口に食べ物を入れても、口唇を閉じることができず、食べ物がこぼれてしまいます。

3.噛んで丸める(咀嚼・食塊形成)

噛むことを咀嚼といい、離乳期に練習により習得されます。下顎の動きは単なる上下運動ではなく、すり合せるような回旋運動をしています。高度な運動ですが、歩行運動などと同じように幼児期の訓練により、ほとんど無意識で行えるようになるのです。この咀嚼では、舌が食べ物をいろいろな場所に移動するという重要な役割をしています。舌と頬の動きによって、食べ物を口からこぼれずに、歯の噛む面に乗せておかなければなりません。

舌の運動に障害があれば、咀嚼はうまくできません。また、唾液も重要です。疾病や脳血管障害の後遺症で唾液が出にくかったりしますと、呑み込みやすい食べ物の塊(食塊)を作ることができません。もちろん、虫歯などで歯がない場合には、入れ歯を作るか、すぐに呑み込みやすい形の食べ物(食塊)にする必要があります。

4.呑み込み(嚥下)

こうしてできた食塊を、喉から食道を通って胃まで送り込むのが嚥下です。
まず、呑み込みやすいように食べ物を塊にして、舌の奥の中央に置きます。ここから、喉の奥(咽頭部)に送り込むまでは、意識的なものですが、その後は、反射と言われる自動的な動きにより胃まで送られます。嚥下は非常に巧妙で複雑な動きです。

食べることの障害

1.精神(心理)的原因

精神活動が低下して(痴呆)、または食べ物であること、あるいは食べることがわからなくなることもあります。このような状態のときに、むりやり食べ物を口に押し込めると窒息することもあります。精神的なストレスが強くかかると、食欲がなくなることがあります。急な環境の変化などの原因により、心身症や鬱病などの精神的病気の発症も考えられます。食べることが精神的に困難になる病気である拒食症もあり、単に摂食障害といえば拒食症のことを意味することもあります。

2.構造(器質)的原因

虫歯が痛んだり、ぐらぐらして噛めないことがあります。歯がほとんどないのに、入れ歯を使っていないければ食べれません。口から喉、食道に炎症や腫瘍があることもあります。また、歯の欠損により顎位が安定せず、引いては喉頭挙上すなわち嚥下反射のメカニズムの障害となる場合もあります。今まで食べられていたのに、急に食べられなくなったら、まず口の中をよく観察しましょう。

3.機能的な原因

食べ物を口に運ぶ

麻痺や筋力の低下などによりスプーン等で食べ物を口まで運べない。

咀嚼する

食べ物が口の外へ出てしまう、うまく噛めなかったり舌の動きが悪いためにうまく咀嚼できない.咀嚼中に、喉の奥に食べ物が流れ込んでしまう。 拒食症や障害児で、口の中の食べ物を不快に感じる症状がみられることがあり、これを過敏と言います。口の中は感覚が鋭く、本来異物である食べ物を受け入れるには自覚が必要です。発達の過程でこの不快感は消失しますが、発達が未熟なまま成長し、心理的な異物感が強まると、咀嚼せずに飲み込んだり吐き出します。逆に刺激に反応しにくい鈍麻も存在しますが、特に要介護高齢者については、過敏と拒否の判別も重要となります。

嚥下する

うまく飲み込めずに、食塊が口の中に留まっている、飲み込むのに時間がかかる、食べ物が気管に入り込んでしまう(誤嚥)ことをいいます。気管に水や食べ物が入ると、激しくせき込んで排出しようとします。いわゆる「むせ」ですが、これが起これば正常です。障害者では、この感覚が麻痺していてむせが起こらない、あるいは筋力の低下が生じていて、完全に排出できないことがあります。

このような誤嚥により肺炎を起こしてしまうことがあります。原因がわからないのに熱を出し肺炎を頻発するなどの場合には誤嚥性の肺炎を疑う必要があります。この誤嚥は嚥下の時だけではなく、咀嚼や食事の後にも起こることがあります。

嚥下障害を疑うポイント

障害者の食事の様子を観察して、摂食嚥下の障害があるかを評価しましょう。

まず、全体を観察しましょう

1.食事中、ぼーとしていないか

高次脳機能障害

2.食欲低下

むせるために食欲がないのか、摂食の疲労により食欲が低下しているのか

3.食事中の疲労

食事をすると疲れていないか

4.痩せ、体重の変化

定期的に体重測定を行う。 原因不明の体重減少に嚥下障害が隠れている場合がある

次に、顔の動きや様子を見ましょう

5.唇を閉じられるか

6.咀嚼、舌の動きはどうか

7.よだれや食べこぼしの程度はどうか

食事の状態の観察は重要です。

8.食事内容の変化

食べ物の好みが変わっていないか

「汁物をとらなくなった」
→軽度の嚥下障害、口腔内の食塊保持不良、喉頭閉鎖不全、
嚥下反射のタイミングのずれなど

「パサパサしたものは飲み込めない」
→唾液の分泌不良、口腔期の障害

「ご飯が食べられなくなった」「軟らかいものしか食べられない」
→咀嚼能力の低下、舌の機能低下など

9.むせる

むせは誤嚥の重要なサインである
むせの頻度、どのような場合にむせるかをみる

「水だけがむせる」「水やお茶はむせるが牛乳はむせない」
→口腔内の食塊保持不良、嚥下反射のタイミングのずれ、喉頭閉鎖不良

「食べ初めにむせる」
→嚥下反射のタイミングのずれ(軽症仮性球麻痺に多い)

「続けて飲み込もうとするとむせる」
→咽頭への食物残留、嚥下反射が弱い

10.咳が出る

「食事をしている途中から咳が出はじめ、食後1~2時間に咳が集中する」
→誤嚥している

「食後、横になるとすぐ咳が出る」「平らに寝ると咳が出る」
→胃-食道逆流による誤嚥

食事の後も、よく観察しましょう

11.痰の量と性状

誤嚥があると痰の量が増加する
痰の中に食物が混ざっていないか、痰の性状を確認する

12.咽頭違和感・食物残留感

種々の咽頭期障害、腫瘍、異物などが疑われる

「食後何となく喉の辺りが変だ・喉に食べ物が残った感じがする」
→咽頭食物残留あり

13.食事後に声の変化はないか

「ガラガラ声になる」「痰がからんだような声になる」
→咽頭への食物残留

もう一度、全体を見ましょう

14.食事時間、食べ方の変化

以前に比べて格段に食べるのが遅くなっていないか、食べ方に変化はないか

評価法

評価法としては、以下のものが簡便に行えます。

評価法

しかしながら、患者様の認知障害・失語症・体調により必ずしもワンパターンでなく実施することが必要です。さらに、ケースによっては介護者からの問診と実際の食事場面の観察から類推して評価せざる得ない場合もあります。

当院の院長は、摂食嚥下リハビリテーションのしっかりとした研修を終了した数少ない歯科医師です。気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。

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